
U15っぽいけど実際はR18
第2章 太陽
交わる牌と夜の欲望
打ちつむぐ心はどこへやら
「ロン。8000は8600」
絶妙なタイミングで親をまくらず、2着を勝ち取った曲者は、それでも全体的にプラスだった。
夜の街に染まりきらず、喧嘩を売らない程度の程よい勝ち分。その金を煙に費やし帰路につく。心が苦しくなったのは、始めの四回だけだった。今はただ毟るのみ。汚れ高値をかき集めるのみ。
「あんた、素人じゃあねぇな。いつからだ」
「まぁ、性の知識を得た頃からですかね」
「筋金入りのむこうぶちか」
「それほどでも」
バイトが杓子定規の挨拶をするのを、閉じていく扉が遮った。ここに慣れることは合っても、求めるべきは勝負だ。度胸だめしと根性の確認と小さな抵抗。
俺はちゃんと悪いことも出来るのだと、世界に言い聞かせるために。自分自身が納得するために。曲り者はふらり歩く。
「そこのお前」
「はい」
振り向いたら殴られた。先程の石ころが、こちらに飛んできていた。石ころは態々俺の顔にあざを作るために、機械より早く階段を駆け下りたのか、顔は汗だらけだった。鼻につく。
「痛いですよ」
「調子のんなよ、ぼっちゃま。さっきの分を返してもらう」
石ころが束になって石ころになっていた。笑った鼻につま先が食い込む。勿論、ここで限界だ。力を使う。一瞬頭に熱が走り、足を名切りながら立ち上がる。
「あ?」
「分からないなら、もう喋るな」
並んだ石ころの頭に脚をかけ叩きつけ、反動を活かしてその後ろに全身の力を込めて蹴りを入れる。カチカチとぶつかる脆い石ころは、ひどく耳障りだった。
「ま、待て」
「待たない」
「悪かった、悪かったから」
「言葉で止まるほどヤワじゃない」
赤飛沫。白のチノパン、この一着だけだったのだが。
時がゆっくりと流れ、その中で自分だけが動けている。楽しく、息がノり、思うように身体が動く。モチベーションはカンストしている。
家なきものが拍手をしていたので、今日の勝ち分はソイツに全部あげた。観客は一人だったし、俺の公演はきっと、それだけの価値はあったから。
