テキストサイズ

ビルの下でえんやこら

第2章 鏡

「すみません」

 男性はブルーの瞳で、声をかける。

「え……外人さん!?」

 そらジローは、3歩ほど下がる。

「すいません、夜遅くに……実は、教室に教材を忘れまして……遅くなって中に入れるかどうかわからなくて……」

「教室?」

「ここの3階で、英会話教室を開いてます。講師のピーター・パンと言います」

「英会話!?」

 それを聞いてサボさんが、名簿を調べる。

「あ、ありますね。英会話塾『彩』、ピーター・パンさんですね。しかし、我々はただの警備員でございまして、ご本人さんかどうかもわかりません。その教材はいま必要ですか?」

 サボさんが、聞いた。

 ピーター・パンは表情を曇らせる。

「いつもの管理人さん、いないですね。その教材、明日の指導に必要で予習するために、取りにきました。すいません、お願いします」

 サボさんは、パソコンの画面を見た。

「うん……じゃあ、空くんが一緒に行くという条件でいいかな」

 本人確認が必要かと思ったが、いつもの管理人、昭玄武を知っているようだったことと、カメラにはその姿が残っているはずだと認知した上で、そらジローが付き添いを条件に、了承した。

「じゃあ、僕が一緒に行けば、いいんですね」

「頼むよ」

 そらジローが、事務所を出ようとする。

「あ、そうだ」

 ポケットから先程、拾ったものを、サボさんに差し出した。

「これ、5階に落ちてました」

「落とし物か?」

ストーリーメニュー

TOPTOPへ