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ビルの下でえんやこら

第2章 鏡

 事務所では、バッジを手にのせ、マジマジと見つめるサボさんの姿があった。

「このバッジは……間違いない……光希弥(みきや)のだ」

 光希弥……それは、行方不明の息子の名前だった。

「間違いない……これは、昔、遊園地で、こねヒーローショーを見た時、俺が光希弥にプレゼントしたものだ」

 サボさんがまだ若い頃、息子の光希弥と遊園地に遊びに行った。そこの特別ステージで演じられていたのが、当時、人気のあったヒーロー番組「お面ウォーカー」だ。

 このショーがあることは、父のサボさんは知っていた。息子が大好きなヒーロー、お面ウォーカーはステージで子供達からパワーを貰おうと、この缶バッジを投げる。

 缶バッジは10個のみ投げられ、このショーでしか手に入らない。

 子供のために、大人が子供をかき分け、必死になって、この缶バッジを手に入れた。

 他の人からは、顰蹙の目で見られたが、光希弥は目を輝かせ、「ありがとう!」と言った。

 ステージ上で、お面ウォーカーは「みんな! バッジを額につけて、負けないぞーって叫ぶんだ!」

 バッジを手にした子供は、それを額に当てる。

「負けないぞーっ!」

 光希弥も、正義のために、お面ウォーカーのために叫んだ。

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