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ビルの下でえんやこら

第2章 鏡

 サボさんは、バッジを握りしめた。

「俺も……負けないぞ……光希弥」

 サボさんは、ふと防犯カメラの映像に目を向けた。

「……まさか」

 サボさんが、もう一度バッジに目を戻した時だ。

「うわぁーーーっ!! 助けてくれぇーーっ!!」

 なぜか、自分しかいない事務所の奥から男の声が……。

「っ!!」

 驚いて、振り返る。

「なんだっ!?」

 サボさんは、椅子から転げ落ちた。

 壁にかかった楕円形の鏡から、英会話講師のピーター・パンの頭が飛び出ていた。

「うわ……うわぁ、うわぁーーーっ!」

 現状が理解出来ない。出来るはずのないことが、目の前で起こっている。

 だが、それはピーター・パンも同じだ。

 鏡から、頭、そして右腕が出てきた。

「助けてくれ、助けてくれ、助けてくれぇーーっ!」

 髪は乱れ、汗なのか、涙なのか、正面を見続けるその顔から、滝のように滴り落ちる。

 なにが起こっているのかわからないまま、サボさんは、ゆっくりと立ち上がり、畳の間に足を乗せた。

「なんだ……どこから出た……」

「お願いしますぅ……助けて……」

 ピーター・パンは手を伸ばす。

 その後ろから、そらジローが戻ってくる。

「さ、サボさんっ! 大変だ……さっきの人が……」

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