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ビルの下でえんやこら

第2章 鏡

 サボさんは、ピーター・パンを指差した。

「あいつを、引っ張れ」

「え……え、あーーっ!?」

 壁からピーター・パンが出ている……そらジローは、そう受け取った。

「サ、サ、サボさん……これは……」

「どうなってるんだ? 一緒にいたんじゃないのか?」

「エレベーターに乗ってたら、急にいなくなって……ここに戻ってきたら……な、なんなんすかこれっ!?」

「わからん。とにかく、引っ張ろう。それしかない」

 まず、なにが起こっているのか……それを知るために、まずこの男を助けよう。

 奇妙な光景に戸惑いながらも、二人はピーター・パンの腕と頭を掴み、手前に引いた。

 だが、急にピーター・パンが叫びだした。

「ああああぁぁぁーーーっ!!!! 痛い!! 痛いって!!」

「我慢しろ! もう1本の手を出せないか」とサボさんは指示。

 だが、ピーター・パンの苦しみ方が尋常ではなかった。

「ぎゃああああああぁぁゎゎーーーっ!!」

「どうした!」

 サボさんが、声をかける。

「違う! 僕はやってない! 僕は知らない。知らない。知らない。しらないぃぃぃーーー!」

「どうした? いま、出してやる」

 サボさんは、ピーター・パンの腋に手を忍ばせ力を入れて引っ張る。

 ピーター・パンの体が軽くなった。

 グンと、体が突き出る。

 そして、そのままズルズルっと、滑り出るように、鏡から飛び出した。

「うわっ!!」

 ピーター・パンの頭を掴んでいたそらジローが、思わず後ろに倒れた。  

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