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ビルの下でえんやこら

第3章 家族

 ふと、目の前に、白く小さな光が見えた。

 それは、ゆっくりと前に進んでいるのがわかった。

 これは、なんの光だろうか?

 周りを照らすほどの強い光ではなく、ぼんやりと小さく輝く程度のものだった。

 サボさんは、ホタルのように舞うその光を、ゆっくりと追いかけていく。

 それは、先に幼い子供が一人で勝手に歩いて行くのを、後ろから追いかける父親のように……。

 サボさんは、見失わないようにその光を追う。

 光が向かう先にはエレベーターがあった。

 しかも、なにも押していないのに、下の階から上がってきた。

「え……」

 エレベーターの明かりが、薄くサボさんを照らす。

 そして、扉が開き、光はその中に
吸い込まれるように入っていった。

「中に入るのか?」

 サボさんは、エレベーターの中に足を入れた。

 正面には、鏡があり、自分の姿が映る。

 光は、その鏡の中に埋もれていった。

「あ……」と声を出すも、サボさんは、見ているしかなかった。

 鏡を見ていると、自分の隣になにか立っているのがわかった。

 やがてそれは、形を現し、一人の人間の姿になった。

 サボさんは、驚きつつ、自分の横を見るが、誰もいない。

 鏡に映る人型は、その姿をハッキリとサボさんに現した。

「っ!!」

 それは、サボさんの妻、貞子となった。

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