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ビルの下でえんやこら

第3章 家族

 二人はサボさんに近寄ってくる。

 顔色は白く、やや、薄黒さも所々見られる。

「光希弥……貞子……」

 サボさんは、両手を大きく広げ、、二人を迎え入れる。

「なぜ、ここに……なぜ、ここに現れたんだ?」 

 サボさんは、二人をしっかりと抱きよせた。

 二人には、感情が無かった。声も出さなかった。息づかいも……温かみも、感じられなかった。

 動く人形のように、ただ、そこにいるだけだ。

 だが、近付いてきた……自分のことを覚えていてくれたからだと、信じた。

「教えてくれ、なにがあったんだ……あの日に、なにがあったんだ!」

 生気を失った二人を抱き締め、応えることのない返事を待った。

 すると、サボさんの脳裏にあの日の事が、甦ってきた。

 あの日の、場所、色、空気、すべてが感じ取れた。

 1つ違うことが……

 運転歴にいるのが、自分だった。

 自分を横から見ている。

 後ろには、眠っている光希弥がいた。

 これは……妻、貞子の視点からの記憶だった。

「これは……あのキャンプの帰り道……」

 場所は山中の高速道路。
 
 ミニワゴンに乗った三人が、走っている。

 背後から、やたらと接近してくる車がいた。

「なんだあれ? えらく煽ってくるなぁ……」と運転席の自分が言った。

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