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ビルの下でえんやこら

第3章 家族

 男は続けた。

「奥さん、恨むなら、あんたのご主人、佐保検事を恨みなさい。あいつのお陰で、うちの組織はトップを失って、往生してんだよ」

「それは、あなた方に問題があったからでしょ!! まっとうな生活を送っていれば、警察にも目をつけられずに済んだはず。自業自得でしょ!」

 貞子は戦っていた。どうあがいても、諦めるしかない状況の中、検事の妻として、恐れずに、やつらに目をそらさずに責めたてる。

「ほう、随分とお強い。もうちょっと若かったら、一度頂きたいものでしたが、あなたとはここまでです」

「なにをする気!?」

 貞子の視界には入らなかったが、トラックのような大型車があるのだろう。バックするときに鳴る、独特な音が聞こえた。

「奥さん、ゲームをしましょう」

「なによ……ふざけないで!!」

「まあまあ、あなたが助かるかもしれない話ですよ……いや、あなただけではないですね……お宅のお坊っちゃんも助かる話です」

 男は光希弥のことを言い出した。

「光希弥……待って、あの子は関係ないでしょ!!」

 貞子は激しく動きながら、腕に巻かれたものをはずそうとするが、一人の女性の力ではどうにもならなかった。

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