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ビルの下でえんやこら

第4章 真相

 当時、まだ16歳だった武は、ただ、怖々と二人の処刑を見ていただけだった。

 この犯罪グループに骨を埋め、もう脱退することは出来ない覚悟を決めた。

「他のメンバーは、どこにいる?」

「知らん……警察にでも捕まったんじゃないか? ここは以前、うちらの事務所として使っていたが、今は当時の仲間は誰もいない。残っているのは、俺と、一番最後に入った、ピーターっていう外国人だけだ」

「ピーター!?」

 あの英会話講師の男だ。

「あの英会話のやつも、仲間だったのか……」

「あいつは、20年前に入ったんだ。だから、あんたとは関係ねぇ……そうか……復讐か……復讐するつもりか……10年ほど前までは、たしかに、闇金融や悪徳宗教、詐欺をやっていたが、今は、俺とピーター二人で真っ当にやってんだ。嘘じゃねぇ、俺達二人ではなにも出来ねぇよ、信じてくれ……」

 武は呼吸を荒くしながらも、そう訴えた。

「そうか……二人だけか……だがな、謝ってもな……妻と息子は帰ってこないんだよ……お前は、ただ、謝るだけか」

「どうすりゃいい!? 金か!? それとも、ビルを掘り起こすつもりかぁっ!!」

 妻、貞子と息子の光希弥は、このビルの基礎に人柱として生き埋めにされていた。

 その恐怖を、貞子は今でも覚えていた。

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