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ビルの下でえんやこら

第1章 警備員

 サボさんは、その当時の事を、懐かしく話す。

「ちゃんと、飯盒とか用意してな。タープを張って、釣った魚や、肉を焼いて食ったもんだよ」

「それ、美味しそうですね。いいなぁ~。車で行ったんですか?」

「ああ、あれは、7月の連休の日だった。暑い日でなぁ、俺は、背中に大きなリュック担いで、テントと寝袋を運んで、山菜とか摘んで、自然を楽しむキャンプが好きだったんだが、当時の妻が歩くのが嫌で……疲れることはしたくなかったんだろうな。車でキャンプ場まで行ったよ」

「いいですねぇ~」

「あぁ、川で息子は水遊び、下流で俺は魚を釣って、妻が焼いてくれたんだよ」

 そらジローはサボさんの話を、聞きながら想像する。

「うわ、いいなぁ。自分も結婚してガキが出来たらやってみたいっすよぉ~」

 だが、途端にサボさんの表情が暗くなった。

「だがな……」

「どうしたんすか?」

「楽しいことはそこまでなんだよ。なぜ、辛い思いと表裏一体で覚えてしまってるのか……」 

「どうしたんですか?」

 サボさんは、大きくため息をつくと、ゆっくりと立ち上がった。

 だが、すぐに額を押さえながら、グラリとふらつき、テーブルに手をついた。

「うわっ、ちょっと……大丈夫ですか!?」とそらジローが、体を支える。

「いや、すまん……見回りに行こうと思ってな……ちょっと、めまいっちゅうか……立ちくらみしたんだ……」

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