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ビルの下でえんやこら

第1章 警備員

 サボさんは、膝に手を当てながら、ゆっくりと椅子に座った。

「イテテテ……」

「サボさん、大丈夫か? 膝が痛いの? 腰?」

「いや、あの当時の嫌な事を思い出してなぁ……やはり、楽しい事だけを掘り起こすのは、無理だったようだな……痛いのは骨盤の方だ……古傷がな」

 サボさんは、苦痛に顔を歪め、腰と股関節の間を押さえる。

「サボさん、見回りは僕が行くから、今日はゆっくりと休んで、防犯カメラ映像だけ見ててよ」

 そらジローは、いたわるように、言った。

「バカ言うな、俺もここで働いてんだ。やるこたぁ、きっちりやらねえと……」

「じゃ、順番換えよう。先に僕がいく。ちょっとゆっくりして、痛みがおさまったら、サボさんがいく。それでいいじゃん」 

「……まあ、それでもいいだろ」

 そらジローは、時計を見る。
 
「サボさん、見回りまで、まだ少し時間がある。もし、良かったら、当時なにがあったのか、話してよ」

 サボさんの表情が曇る。

「空くん、酷いなぁ……いま、この状況で、それを喋らすのか?」

「いや、話してスッキリすることもあるんじゃないの?」

「俺の辛い話、聞きたいだけじゃねえか。まあ、確かに、話せないことはないがな。これから先、空くんにも起こらないとは限らないからな」

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