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僕ら× 2nd.

第13章 ソーウ" キ プ 1 --Ar,Shu

***

そして俺と女は会食もないままに、ホテルの居室をあてがわれる。
女は未だ、地を這う丈のドレスで、歩くたびにワサワサと鳴る。

辰巳は俺が入室したのを見届けると、「逃げんなよ」と言い置いて扉を閉めた。

まったく不親切な野郎だ。
逃げないけど、抜け出してやろ…。

さて、まずは。
直接の監視から解放された俺は、背筋をぐっと寄せた。
あー、ほぐれて気持ちい。

そんな俺を、鋭く見据える白いワサワサ。

俺が勝手しても、黙っていてくれるかな?
所属組織くらいは聞いておいたほうがいいな。

「あのさ、、あなた、誰ですか?」

俺は平和的に尋ねたつもりだったんだけど、女は部屋中央にあったフルーツバスケットからナイフを取り出して自分の首に当てた。

「これ以上、近づいたら、のどを切り裂きますよ」

「お?」

俺、なんか悪いことしたっけ?

ん?このシチュエーションって、、と思い出す。

スーツを着た俺は、"近づかないで"って彼女に避けられて。
だけどあれは、"大好きすぎるから近づかないで"って意味だったんだよなぁ……懐かしいなぁ。

この服でも、キュンキュンしてくれるかな?
するだろうなぁ、見せてぇなぁ。
可愛いなぁ、花野は…。

俺が想いを馳せていると、キーンと声が飛んできた。

「なにをニヤニヤしてるんですかっ?」

おっと、いけね。

「えーっと。俺、自分の置かれてる状況がよくわかってないんだけど。そっちの奥って部屋どうなってる?誰もいねぇんだよな?確認しときたいんだ」

ガンガンに睨む女は、俺の質問には答える気がなさげ。

他の誰もが教えてくれないから、この女から事情を聞きたいんだけどなぁ。

仕方ねぇ。
死なれても困るし、他をあたろ。

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