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夏夜の煙

第1章 1人で吸うか、2人で吸うか


担任…。



そういえば、2年になって担任が変わったとかなんとか潤が言ってたな。



差し出されるスマホの画面を見てみると、私の残りの授業数が科目別に示されていた。



「今が7月25日。おまえが休んだ日数は110日。このままいくと、確実に留年。やばいぞ?」



「……話ってそれだけですか。」



「え、うん。」



目をくりん、とさせて 頷く先生に、一礼して、



「わかりました。高校、退学します。」



そう言った。



「…………うぉ?ちょっと待て?退学?」



束の間の静寂のあと、先生が驚きの声を上げる。



「はい。元から行くつもりなかったし。お世話かけました。失礼します。さようなら。」



これでもう追いかけてくることはないだろう。



今度こそは本気で帰ろうとしたら、また、すっ、と櫻井先生の手が伸びてきた。



「あの……帰りたいんですけど。」



先生の顔を見ると、さっきまでのキラキラくりくり可愛いオーラが消えていた。



「……??」



うっすらと細めた瞳に、歪む唇。



別人…というか、廃人にしか見えなかった。



その廃人は、げっそりとした顔で、



「時に和奏ちゃん。先生には職員会議というものと、減給というものがあるのを知っているかな?」



そう吐き捨てた。

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