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スパダリは1日にして為らず!

第1章 それは何かの間違いです


キッチンワゴンの下に無造作に置いてあるゴミ袋を見つけ、悠季は早速片付けに取り掛かる。

明らかにゴミと分かるものをポイポイと押し込むくらいなら簡単だった。案外早く、綺麗に出来るかも。
……なんて、考えていられたのはほんの5分足らずの事だった。



「これは、どっちだ?」

悠季は散らばる紙を拾い上げてはその度に首を傾げた。
良く良く見ると、ゴミなんだか仕事の書類なんだか曖昧なものが多過ぎる。

ぐしゃぐしゃにされてはいるが、会社名やら色々な数字が並べられているそれを安易に棄てて良いかなど、悠季に分かるはずがない。

だから結局はその紙を拾い集め、纏めるしか出来る事はないから、片付く筈もないわけで。

それでもテーブルの上にきちんと纏まっているだけで、片付いたように見えるだけ多分マシだ。

遙斗には「掃除するから待ってて欲しい」と伝え、おとなしくDVDを見て貰っている。その間に掃除機をかけようと収納からそれを持って来た。

***

ー…ガシャン!
バサバサバサッ!

背後で大きな音が聞こえ、慌てて振り向いた悠季は顔をしかめた。

「うわっ!あ、やば…っ」

おかしい。
何故掃除機を掛けて綺麗になるはずが、更に酷い事になってるのだろうか。

…何故なんて考えた処で答えは1つしかない。

物を大して避けずに掃除機を動かした為に、あちこちにぶつかってはせっかく積み上げた雑誌は崩れ、家具に当たってはそこに置いてある物が落下するからだ。

「おにいちゃん…?」

激しい物音と物が落下する惨状に、遙斗が不安そうに振り返る。もうとっくにDVDは終わっていて、既に停止画面になっていた。

「ご、ごめん…!」

慌てて掃除機を止め、遙斗に近付く。恐らく彼にしたら掃除をしてるようには見えてないだろう。何故なら、遙斗は悠季が傍に来た途端「ぼくもやりたい!」と笑ったからだ。

多分彼からしたら、遊んでいるように見えているのだろう。

「遊んでないんだけど……、ま、いっか」

こうなれば一緒に楽しみながら掃除しよう!と仕切り直した悠希は、遙斗と共に散らばった書類から手を付け始めた。

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