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スパダリは1日にして為らず!

第1章 それは何かの間違いです


あれ、何か変?と言わんばかりに首を傾げる男に嘘や揶揄いは見られないし、確かにあの電話の対応は宅配会社にしてはおかしいとは思っていた。

思ったけど、……え?



「あの、ここ白ネコ急便じゃ…」

「どう見ても違うと思わない?」
綺麗な顔で苦笑する。

「ですよね」

ここまで来て置いて、今さらと言う気持ちもあるが、ノコノコ出向いて子どもに促されるまま入った自分が情けない。

「すみません。俺、間違えました!」

「え?」

「いや、あの。俺バイト探してて、白ネコの面接に電話掛けたつもりで…」

「バイトならいいじゃない」

「は?」

「これもバイト…仕事の面接だよ?内容違うだけで。それとも白ネコさんじゃなきゃダメだったのかな?」

「…でも」

そのバイトの内容をまだ知らされていない。だから悠季も簡単にそれに対して頷く事が出来ない。

「仕事はね、ハウスキーパー」

ですよね。さっきその名称聞いてます。だから

「無理です」

間髪入れずに悠季が拒否する。

「俺、家事能力ゼロなんで、全く持って役に立てませんし」

無理な仕事と分かった以上、もう話す必要はない。悠季は「お邪魔しました!」とぺこりとお辞儀だけはして、くるりと踵を返した。

しかし

「…おにいちゃん、きてくれないの?」

背中越しに聞こえた寂し気な声に思わず足が止まる。

「仕方ないだろ、ハル。ダメなんだって。ああほら泣かないの。男の子だろ」

そう言う男の声は正直言って芝居がかっているとしか思えない棒読みなそれだったが、ハルと呼ばれた子どもの声はさすがに演技とは思えなくて、悠季としてもそのまま帰るのが躊躇われてしまった。

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