
花と時計
第2章 高嶺の花の香り
はっと足を止めた。
周りを見渡すと、学校の敷地内とは思えないほど鬱蒼とした森が、舗装された道を挟んだ両脇に繁っている。
ここはどこ?
学校が終わって、寮に帰ろうとしていたはずが、途中で考え事をしたせいで、行きすぎたあげく、道に迷ったらしい。
私は落ち着くために深呼吸をした。
とりあえず、来た道を戻ろう。
戻れば、必ず、学校の中で一番高い時計塔が見えるはずだ。
時計塔は敷地の中心に建っているから、それを目印に寮に帰ればいい。
腕時計をみると、門限までにはまだ時間がある。
私は道の先を見た。
ここまで来ると、どこにたどり着くのか知りたい。
「その先には裏門しかないよ」
私の思考を読んだような言葉が、背後からかけられた。
