
花と時計
第4章 夢
「おはよ」
「お、おはようございます」
普段の制服姿とは違う大人びた雰囲気の彼に、私は一層ドギマギした。
彼の色気は一体、どこから溢れているのだろう。
一方の私は、どうしてこうも服に着られてしまうのだろう。
そっとため息をつくと、先輩に顔を覗きこまれた。
「緊張してる?」
「そ、それは、もう」
「どうしてだろう」
「せ、先輩が、すてき、だからです、かね……?」
意を決して言葉にすると、先輩はくすぐったそうに笑った。
「ありがと。
依子ちゃんもすてきだよ」
お世辞だと分かっていても、嬉しさを隠しきれなかった。
そうこうしている内に、白い車体に紫色が鮮やかなラベンダーの絵が描かれたバスが来る。
今日はきっとすてきな一日になるだろう。
そんな予感を抱きながら、私はバスの車窓を流れていく景色を眺めた。
