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花と時計

第4章 夢


バスに乗って数十分。
私たちは、目的地の大型ショッピングモールにたどり着いた。

休日ということもあり、人口密度が高い。
人混みが苦手な私はめまいを覚えた。
だけど、負けるわけにいかない。

暗乃雲の新作のために。
今日をいい日にするために。

気合いを入れたその時、先輩の手が私の手を握った。

はっと見ると、彼はいじめっこのように、ふふんと笑った。

「はぐれないように。ね?」

私は、顔が熱くなるのを感じながら頷いた。


先輩に手を引かれ、本屋へと向かう。

ちらちらと視線を感じるのは、先輩へ向けられているものにちがいない。

どこぞの人気俳優かというくらいに服を着こなし、オーラを振り撒いているのだから、視線をおくる気持ちはよく分かる。


一方の私は、地味で不気味で、先輩にまるで釣り合っていない。


完璧な彼の、もったいない要素になってしまっているのが、私は申し訳なくなった。

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