
花と時計
第4章 夢
「せ、先輩、私、大丈夫です」
「ん?」
「私、後ろを歩きます」
「歩くの早かった?」
「も、申し訳ない、ので」
先輩からため息が聞こえ、私は俯いた。
嫌われてしまった?
私は不安になった。
今まで他人からの評価なんて気にしなかったのに。
先輩に嫌われると思っただけで、こんなに怖い。
だけど、言ってしまったことは取り消せない。
離されると思っていた手は、逆に強く握られた。
「俺はこうしていたい。
それでも申し訳ないって思う?」
「でも」
「何?
依子ちゃんは、俺に見る目がないって言いたいんだ?」
「ちっ、違います……!」
顔をあげた私は、先輩の挑戦的な視線とぶつかった。
「でしょう?」
初めて会った時のように、私を試すように笑う。
やっぱり、彼は自由で自信に満ちている。
私にはない全てを持っている。
私は彼に憧れる。
それはもう、どうしようもなく。
