
花と時計
第4章 夢
私達が本屋について、新刊コーナーを覗いた時、暗乃雲の新作は、ちょうど2冊だけ残されていた。
「買えましたね!」
私は興奮ありあまって、先輩を見上げた。
「ほんと、運命、だね」
「ま、まだ言いますか」
私が口をとがらせると、先輩は楽しげに笑って、私の顔を覗いた。
「ね、俺まだ見たいのあるんだけど、付き合ってくれる?」
「もちろんです」
「ありがとう」
自然と手が握られる。
それが当たり前のように。
手のひらから伝わる温もりが、いつの間にか、私の不安や緊張をなくしていた。
先輩は軽い足取りで服屋を次々とまわった。
自分のものではなく、私のものを見つけるためだった。
私はファッションに詳しくないから、先輩が勧めてくるままに試着をし、彼と店員さんに「かわいい」「似合ってる」とべた褒めされ、ひたすら恥ずかしい時間を過ごした。
しかも、先輩は私のものなのに、買ってあげるからと聞かない。
押し問答の末、私は先輩の厚意をありがたく受けることにした。
最後の服選びが終わり、彼が会計を済ませてくれている間、私はお手洗いに向かった。
