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花と時計

第4章 夢


彼は、窓に頭をもたれて眠っていた。
寝顔はどこかあどけなく、少年のように見えた。

私も力を抜いて、座席に寄りかかる。

気を使わなくなると、あの女性のことが思い出される。


彼と親しげにしていた彼女。
自然にされた手首へのキスと、派手なネイルがなぞった首筋。


友達でないのは明らかだ。


私はため息をついた。
また、先輩の寝顔に目をやる。


彼は危険だ。
これ以上、近づくつもりならば、再び殻を形成するべきだ。


私の本能か理性か、叫ぶものがある。


でも、私は理解が出来ない。

憧れの人を知りたいとして、何が悪いんだろう。
憧れに従うことの、どこが悪いんだろう。


どうしても。
どうしようもなく。


私の心は彼に焦がれて、彼の全てに引き寄せられてしまう。


それは、溶けた心の殻の代わりになるほどだった。

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