
花と時計
第6章 I fall in love with unknown
先輩が言う夢も同じなのだろうか。
私も含めた生徒たちが、先輩に見る夢。
あるいは、彼にとって友人以上である存在たちが、彼に映す夢。
みんなが彼に抱く夢、願い、つまり理想。
それが居場所だと?
私はぞっとした。
理想を叶えるのは、とても息苦しい。
私は幼い頃にそれを体験した。
母が求めるいい子でいよう。
それは、理想になることから逃げた今でも、解くに解けない呪いになって、私の世界を暗くしていた。
理想であり続けるということは、呪いにかかるということだ。
あんな風に平然としてはいられない。
間違いなく、彼は傷だらけだ。
そのことに、彼は気が付いていないのでは……?
ぞわりと総毛立ったのは、手のひらをくすぐられたからだった。
ばっと見ると、夢咲先輩が私の隣にぴったりと立っている。
