
花と時計
第6章 I fall in love with unknown
「なっ、なんで先輩はひっそり来るんですか!」
私の抗議に、彼は肩を竦めた。
「気付いてると思ったんだけど」
「気づいてませんっ」
「こんなところでどうしたの?」
先輩は私の手首を掴む。
人差し指で私の手のひらを引っ掻いてくるから、むずむずする。
「考え事です」
「俺のこと?」
「せ、先輩は、問題児ですからね」
彼は、ふ、と、息を吐くように笑って、手のひらを上に向かせる。
そうして、自分の口元に持っていくと、私の手首に口づけをした。
甘える猫のように、私の手のひらに頬擦りをし、舐めて、甘く噛む。
はぁ、と、吐息を漏らして、私によこす流し目は官能的だ。
「続き、してほしい?」
手のひらに囁かれる。
いけないと思っているのに、私は頷いてしまう。
「じゃ、俺のこと、捕まえて」
「え?」
先輩は小悪魔のように私から離れていく。
