
花と時計
第7章 初恋の君
ふいに名前を呼ばれ、私は顔をあげる。
私を見ている彼。
今時の若者といった風貌だけど、ぱっちり二重の爽やかな顔立ちには見覚えがあった。
中学時代、私に『友達になって』と言った人。
私の初恋、そして、初めての失恋を奪った人。
「う、うつのせ、くん?」
恐る恐る名前を呼ぶと、彼は、途端に目を輝かせて笑顔になった。
「わー、マジか!
久しぶり!」
あまりの喜びように、私は圧倒される。
「お、お久しぶり、です」
「相変わらず敬語」
「現瀬くんは元気そうで」
「おう、俺はもう元気!」
私は彼からノートを受け取った。
立ち上がって、改めて見ると、当時より、彼の背丈は伸びていたし、何より体格が男性らしくなっていた。
だけど、太陽のような笑顔は変わっていない。
「よりこは雰囲気変わったな。
前髪ないし。
名前見るまで分かんなかったよ」
私は、まだ短い前髪を触って笑った。
彼は腕時計を見て、私に聞く。
「この後、予定ある?」
私もつられてスマホをつける。
デジタル時計は、13時丁度を告げている。
