
花と時計
第7章 初恋の君
からん、と、氷同士がぶつかって、ミルクティーの柔らかなブラウンが揺らめく。
向かいに座った現瀬くんが頼んだレモンティーは、窓にかかったブラインドの隙間をぬって射し込む光のきらめきを、机に写している。
かつての初恋相手と、お洒落なカフェで対面する。
ありえない夢のようだった。
「何かの帰りだった?」
「あ、いえ、その」
私は言葉を選んだ。
「ちょっと散歩しようかなって時でした」
「こんな暑いのにアクティブだな」
「う、現瀬くんは?」
「俺はゲーム買って、バイト行くとこ」
と、彼は隣に置いたリュックを叩く。
「はあ、ゲーム……」
「今、子どもっぽって思ったろ」
「いっ、いえいえ、そんな」
私は首を振って、話題を変える。
「バイトなのに大丈夫ですか?」
「まだ時間あるから大丈夫。
ま、遅れても平気だし」
彼は笑って、ストローを触る。
