
花と時計
第7章 初恋の君
「ちなみに何を」
「便利屋っていえばいいかな。
個人営業のちっさいとこでさ、年寄りの話し相手しか仕事がねーの」
「そうなんですか……」
「よりこはバイトしてんの?」
私はミルクティーを飲みながら、首を振った。
「いえ。校則で禁止されてるんです」
「学校どこだっけ」
「花園高校です」
「真っ白制服のとこか」
「真っ白。確かに」
適格な表現に、私は笑う。
「俺は工業でさ、岩谷ってとこ」
「へぇ」
「もうマジ体育会系でさ、勝手にムキムキになってくんだよ」
ほら、と、腕の筋肉を見せてくる様子が子どもらしくておかしかった。
笑顔が自然と溢れてくる。
嬉しくてそうなることはあっても、楽しくてなるのは、久しぶりだ。
そんな私に、彼は言う。
「よりこ、ほんとに変わったな」
「そうですか?」
「そうだよ。
前はそんなに笑わなかった」
彼が言う『前』とは、中学時代のことだろう。
確かに、あの頃の私は笑わなかったし、そもそも感情を表に出さなかった。
厚い殻が心を守っていたから。
あの頃と比べると、確実に私は変わっている。
「カレシの影響、だったりして?」
