
花と時計
第7章 初恋の君
「かっ、彼氏なんていません、そんな」
「マジ?
でも絶対ねらってるやついるって」
話した経験のない会話は居心地が悪く、私は話題をそらす。
「う、現瀬くんの彼女は元気ですか?」
「おっ、カノジョいたことないやつにそれ聞いちゃいます?」
彼の発言に、私は引っ掛かった。
「え?」
「ん?」
彼女がいたことがない?
そんなはずはない。
だって、私は見たのだ。
「あ、あの、中学の時の子、は?」
「中学の時……?」
彼は呟いて、あ、と声をあげた。
「知ってたんだ?」
と、彼は腑に落ちない表情を私に向ける。
「あ、えっと」
私は視線を落とす。
隠していても仕方がない。
白状しよう。
「実はその、私、見てしまったんです……」
私は、2年前の失恋の理由を洗いざらい白状した。
もちろん、失恋の部分は隠して。
