
花と時計
第7章 初恋の君
聞き終えてから、現瀬くんは軽く笑った。
「よりこ、それ勘違い」
「勘違い?」
彼は頷いて、ストローで、薄くなったレモンティーをかき回した。
当時、現瀬くんは1年生のある女子にストーカーじみたことをされていたらしい。
あの日、我慢の限界だった彼は彼女を呼び出し、きつく注意をした。
すると、彼女から『思い出がほしい。そうしたら諦める』と頼まれた。
諦めてくれるのなら、と、彼は、仕方なく彼女に思い出をあげたという。
「だから、そいつとは付き合ってない」
現瀬くんの口から語られた真実に、私は言葉を失った。
現場を目撃した私は、てっきり、現瀬くんが彼女の告白を受け入れたのだと思っていた。
だけど、それは間違いだった。
私は、私の勝手な早とちりで、初恋を終わらせてしまったのだ。
彼との友達関係も。
