
花と時計
第7章 初恋の君
「バイト先の先輩がさ、カノジョと行くって買ったらしいんだけど、その前にフラれてさ。
捨てんのももったいないから、やるってくれたんだけど、いや、俺も相手いねーわみたいな」
彼はそう笑った後、咳払いをひとつする。
「まあ、そんな話はおいといて」
ふいに、彼が真面目な表情で私を見るから、私はドキリとした。
「俺と一緒に行きませんか?」
彼の口から出た、真っ直ぐな誘い。
それは、私に、友達になろうと言った時と同じ口調で。
私の気持ちも当時と同じものになった。
「はい、ぜひ」
頷くと、彼の表情が、ぱっと明るくなる。
「よっし!」
大げさに喜ばれて、私は気恥ずかしくなった。
そうして話に花を咲かせていると、気がつけば、デジタル時計は15時を示していた。
