花と時計
第8章 震える蕾
「よりこ」
はっと我に帰る。
机を挟んで向かいに座った彼が、私の顔を覗きこむ。
「大丈夫か?
疲れた?」
「疲れた、けど、大丈夫です」
私はスマホの時計を見た。
12時ぴったり。
お昼時のレストランは混み合っている。
恭次くんの助言通り、早めに来て、席を取っておいてよかった。
私は、結露で濡れたカップを持って、オレンジジュースを飲んだ。
「この前、聞けばよかった」
「ん?」
「好きな人、いんの?」
突然の質問に、私はジュースを噴き出しそうになった。
ようよう我慢して、ごくりと飲みこみ、焦りながら聞き返す。
「なっ、なんで?」
「ずっと気にしてるから」
つまんなそうに言う彼に、私は申し訳なく思った。
だけど、正直に言えるはずがない。
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