テキストサイズ

花と時計

第8章 震える蕾



近くで皿が割れた。


私の世界に、喧騒が戻ってくる。

私は息を吐いて、髪の毛をかきあげた。


「よりこは優しいな」


静かに、恭次くんは呟いた。
結露の滴がカップを滑り落ちる。

「だけど、それで先に進めなくなるんじゃないかって、俺は怖い」

「進めなくなっても、私の選択です」

知りもしない人を悪く言う人に、心配されたいことなんて何もない。

「そうか」

彼はそれ以上、何も言わなかった。

ストーリーメニュー

TOPTOPへ