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花と時計

第8章 震える蕾


最寄りのバス停で、私たちは降りた。
途中まで一緒ということで、私たちは別れ道まで歩く。

日が伸びたとはいえ、19時頃になると、空はもう暗く、星がちらちらと輝き始めている。

「今日はなんか、疲れたな」

「うん」

「でも楽しかった?」

彼の問いかけに、私は頷いた。

「だけど、しばらくはいいかな」

「そっか」

オレンジ色の街灯が、人気のない道を照らす。
車が横を通りすぎる音が、やけに大きく聞こえた。


私は最低なことをしてしまった。
彼の言い方についかっとなってしまったけれど、冷静になって省みると、私を心配してくれているからこそ、彼はああして厳しく言ったに違いない。


謝らなきゃ。
せっかく再会したのに、こんなことでさようならは悲しすぎる。

「じゃあ、ここで」

別れ道にさしかかり、真っ直ぐ行こうとする彼を、私は呼び止めた。

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