無料で楽しめるちょっと大人のケータイ小説

　なにかと騒々しくも、それでも無事に（か？）買い物を終えた俺たち。その両手にはぴっちりと膨らんだ買い物袋をぶら下げている。

　アウトレットなんていっても、今の俺にとってはかなりの浪費だ。まあ、いいけど……。

　標高の高い避暑地の空気は、夕刻を迎えたところで涼しげなものと変わる。それを自然と深く吸い込みながら、駅前通りの街路樹を見渡しつつ駐車場へと向かって歩いた。

　そんな時に不意に、真は少しだけ、その口を面白くなさそうに尖らせている。

「あんに笑われたら、流石にちょっと心外だよ……」

　真にしてみれば俺のピンチに際して、意気揚々と駆け付けたつもりなのだ。それだけにその顛末を笑ってしまった俺に、どうやら文句を言いたげである。

「別に、真のことだけを笑ったわけじゃないさ。だが、悪かったよ――それと」

「なに？」

「ありがとな」

「はぁ……？」

　俺が素直に礼を言ったことが、よほど意外だったらしく。真は次の表情をどう変えるか、自分でもわからなくなったように困惑した表情をしていた。

「もう！　なんか、調子狂うな――今日のオジサンはさ」

「ハハ――散々、俺の方が狂わされっぱなしだったし。たまには、いいだろ」

　そんなことを話しながら暫く歩くと、真はまた、こんなことを訊ねてくる。

「ねえ、さっきの女の人って――オジサンと付き合ってたヒトでしょ？」

「まあ、一応」

「それなのに、あのイヤミな男に取られちゃったんだ」

「ん？　うーん……まあ、そうなるのか、ね」

　俺は口籠りながらも、仕方なくそれを認めた。