ほんとのうた(仮題)
第6章 お気楽、逃避行?
俺という人間は、どうにも権力というものに反感を覚えずにはいられない、そんな性分であるようで。別に正義感とか格好の良いものではなく、生まれついてのアンチ体質と、精々その程度のことなのだ。
もっと言えば、やや偏屈なひねくれ者といった様相に違いない。
まあ、性分の話などどうでもいい。問題は、今更会社にしがみつこうなんて気持ちが、俺の中に皆無であるという点。
それでも、斎藤さんたちの行為を余計なことだと責める気持ちがあるはずもなく。嘆願書に添えられた署名に目を通せば、そこには過半数以上の社員と家族にまで渡り、その名が記されていた。
「お気持ちは大変ありがたく思いますが、俺のことで皆さんが気に病む必要なんてないんですよ」
「はあ……しかし……」
口籠る斎藤さんの態度は、なにやら根深いものを匂わせていた。
「他にも、なにか問題が?」
「ええ……実は新井さんが会社に来なくなってから、本格的に社員の配置換えが行われたのですが……」
「ああ。新規事業部は、事実上の解体ですから。それに伴うものですよね。斎藤さんにしても、元の職場に戻ったのではありませんか?」
「いえ、それが……私も含め半数は、今後も新規事業部の所属と決まりました」
「え、なんで?」
「そこに残されたのは、私と同様、何れも五十代から上の社員ばかりです」
「――!」
そこまでの話を聞き、俺の中にピンとくるものがあった。