ほんとのうた(仮題)
第6章 お気楽、逃避行?
新規事業部に残されてれた仕事など、せいぜい在庫整理等の後処理くらいのものだったはず。
斎藤さんの話によれば、そんな職場に今も八名のも社員が残せれているという。しかもその全員が、年配の社員――とするのならば。
俺は経営側の意図が、透けて見えた気した。
「会社は社員のリストラを、諦めてないと?」
「はい……おそらく、飼い殺しにして辞職に追い込むつもりのようです。現にこの何日かは仕事らしい仕事は全く与えられていません。
「そんな馬鹿げたことを……?」
「ええ。その上に新任の上司には、口厳しく叱責を受けるばかりで……残されたメンバーは皆、精神的にかなり参っているのです」
元々彼らは、働き者の実直な社員である。そんな人たちがその様な状況下に置かれれば、会社の思惑通りに事が運ぶ可能性も高い。
如何に経営が厳しかったとしても、あまりに下劣なやり方だ。
そんなことに怒りを覚えつつも、俺はふと気になったことを訊ねてみる。
「それで、俺の後釜――その新任の上司ってのは、誰なんですか?」
すると斎藤さんは、ため息交じりにその名を告げるのである。
「太田さん、ですよ……」