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ほんとのうた(仮題)

第7章 二人の時間(とき)に


「なんだ、起きてたのか?」

 俺が見ると――

「なんか、妙に……染みてくるの。特に、詩が……ね」

 真は瞳を閉じたまま、まるで寝言のようにそう言った。

 それに対し曲名を告げた俺は、少し迷った後にこのような注釈を付け加える。

「この曲は……バンドのヴォーカルが、亡き祖母のために書き下ろしたものだって」

 決して直接的な表現ではないが、確かにそれは別れを唄った一曲である。

 すると、ややあって――

「そっか……どうりで、ね」

 真は消え入りそうな小声で、そう言った。

 話しながらも、半分は夢の中にいるように。真はポツリポツリと、内に秘めていた想いを明かしていった。

「私の、おばあちゃん……今年の春に、死んじゃったの」

 俺の祖母の墓参りの時に、聞いていた。その「おばあちゃん」は真の名付け親であり、彼女が唄うことを生業とする、そのきっかけとなった人だった。

「その時、私にはライブがあって……おばあちゃんと……お別れが、できなくって……ね」

「……」

 俺はなにも言わずに、真の話に耳を傾けた。

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