ほんとのうた(仮題)
第7章 二人の時間(とき)に
そんな感じでなんとか夕飯を終えた後、部屋に戻る途中で一体誰が使用するのかと思うほどに寂れた卓球台を発見。
腹ごなしとばかりに「やろうよ」と言い出した真に対し「よーし」と乗ってしまったのは、これもまた旅先でのテンションだと言うべきか。
結果的には、これがまた災いの元となる。女子供に負けるものかと少しは良いところを見せようなんて思ったのも束の間。
互いに特に経験もなければ、力量の程度こそ大差ないはずであるのだが、問題はその部分ではなく、なんといっても瞬発力と基礎体力において明確な違いがあるのだ。
結論から言えば、若き女子に翻弄される疲れたオジサンと言う図式が成り立つ。すなわち、かなりこっぴどく真にしてやられたのだった。
それで苦笑いでも浮かべておけばよいものを、せめて一矢報いんとして些か剥きになってしまったから、またこれが悪かった。
ついには――
グキ!
「……ッ!?」
俺はか細いうめき声と共に、腰を押さえつつその場にうずくまっていた。
海における真との戯れの時に違和感を覚えた四十男の腰は、今度は少し「ヤバめ」の鈍い痛みを訴え始めている。
「オジサン、大丈夫?」
「あ、ああ……平気だ」
心配そうな真にそう答えたのは、もちろん虚しさ溢れる中年の強がりに過ぎない。
我ながら衰えゆく身体に一定のショックを受けながらも、流石にこれでは恰好のつけようもなかった……。