ほんとのうた(仮題)
第8章 身体を求め、精神(こころ)を探して
真と、唇を探り合いながら――
「はあっ……!」
二人は互いが身に纏う脆弱なる衣を、乱雑に手を交差させながら、ゆっくりと、しかし、それでいて慌ただしく、取り去ろうとしていた。
ぐいっと浴衣を剥くと、真はその両肩を――きゅっと窄め。
女らしいその幅の狭さに、壊れてしまいそうなまでに強く抱き締めたい――と、衝動が駆け抜けた。
適度にふくよかな胸は初見ではなかったが、その時に自らの腕により挟み上げるようにしたそれは、二つのたわわをくっきりと隆起させた。
均等に並んだ乳首の尖りが俺の胸板で――すっ――と、擦れる。
「ぁん……!」
切ないように声を出し、真は身体をぴくりと捩った。
その時の、音と感触、息遣い、体温、心の揺らめき――。
それらが総じて、ぞくりと――俺の背に蠢くなにかを、伝えてゆく。
時として俺は――情交に赴き、裸になった男女の光景を――滑稽に感じることがあった。
ダイレクトに開かれたような肉欲の激しさに反し、内心それを俯瞰して眺め見た時に、その絡まりゆく姿の形に対して頭の深部では逆に覚めた気がしてしまう。そんな感覚が確かにあった。
日常では決して見せない様なのだと互いに思えば、それが興奮へと繋がり、その時を共にする二人は特別なのだと信じて高まり――だが、その思い込みがなんとも滑稽なのだ。
身の寂しさを重ね合わせ、結局それは――何処まで入っても人としての凡庸な発想からの行為に過ぎないのだと、そう感じて。そんな時が何時の頃からか、ずっと続いていたように思う。
でも今は違う。違っていると――そう思いたい。