ほんとのうた(仮題)
第8章 身体を求め、精神(こころ)を探して
胸を反らし、大きく仰け反った真は――たぶん、感じてくれているのだろう。
「……」
だが、俺は――それを素直な喜びに、結びつけることを躊躇する。
激しさでも技術でもない愛撫は、ある程度の経験を経た中でいつしか知ったに過ぎないもの。その経験の業が今、真を乱そうとしていることに、俺はどうしようもなく冷めようとしていた。
それは当たり前のことであって、こればかりは如何ともし難い。荒々しく、或いはたどたどしくとも――真と同じ高さの感覚を有して、情交の最中に共に墜ち行くのは無理なのだ。
そう、わかりきっていること。それでも、只の中年が若い真を甚振るような様が、俺はどうしようもなく嫌なのだと、思っていた。
そんな自分の姿が、醜悪であるようにさえ――映った。
「まぁた――難しく、考えてなぁい?」
躊躇したその間に気づき、真は静かに上体を起こしながら、端的に俺の図星をついた。
「いや……そうじゃなく」
俺は戸惑い、視線を落とした。
すると――
「オジサン、だけ――じゃないよ」
「え?」
「私だって、思うところくらいある。それはね――」
「うっ……!」
俺と同様に頭を垂れつつあった肉棒を、真の右の掌が包んだ。そうしてから滑らかな指先で、それを俄かに擦り始めていた。
「ほら――こんな風に、ね」
「……?」
「今更、おしとやか振りなんて、流石にできないもん。けれど、やっぱり。じっと受け止める女の子の方がオジサンは好みなのかな、なんて思ってみたり――とか?」
「べ、別に……俺は……」
「でも、無理無理。私は私だから。こんな私でも――いいって、オジサンは言ってくれるんでしょう?」
まるで叱られた後の子供みたいに、真は俺の顔を仰いだ。