ほんとのうた(仮題)
第8章 身体を求め、精神(こころ)を探して
「バ、バカ! いいわけ、ないだろ!」
俺はそれと同じだけ腰を引き、なんとか寸前で逃れる。
「どうして?」
「どうしてって、お前な……」
俺は瞬間的に頭を抱え、言う。
「万一の時、どうするつもりだ」
「わからないけど、別に困ったりはしないよ」
「な、なんで?」
「アハ、安心してね。責任とってなんて言わない。あ、それとも――責任とって、って言った方がいいわけ?」
「そういう話じゃねーよ!」
「ああ、ひどーい。ちゃんと私の質問に、答えなさいよね!」
その問答は、これからセックスに赴く二人には似つかわしくもなくて。それまで培った男女の雰囲気を、まるで破壊し尽くす勢いのまま。
俺も真も普段の如く、言い争う構えを取った。
だが、俺にしてみれば、それは当然であり。ふざけてはいけない場面だからこそ、仮に却ってふざけたように見えたとしても、愚直でなけれなならなかった。
「こんな無責任なことして、お前の将来に傷がついたらどうするんだ?」
「どうして、そんな風に思うかなー。仮にそうなっても、それこそ運命でしょう?」
「それは現時点で背負込まなくても済む、運命なんだよ」
「だからぁ、私はネガティブに思って言ってるわけじゃないの」
「だったら、なんだ?」
「私は――全てを受け止める――ちゃんと言ったでしょう」
「それこそ、言葉の綾だろうに……なんだってお前は、妙なところが頑ななんだよ……」
俺は軽い頭痛を覚え、意識がクラリとした。
だが――
「それじゃあ、オジサンは私に対して――快楽だけを求める?」
「はぁ……?」
「私には、そうは見えなかった。オジサンは誠実に、私を求めてくれているんだって、そう思えたから」
「真……」
「だから、私……オジサンの全部を、この身体で感じてみたい」
真は真剣な表情を向け、再びじわりとと腰を、俺の方へと差し出してゆく――。