テキストサイズ

ほんとのうた(仮題)

第8章 身体を求め、精神(こころ)を探して


「……」


 最早それらは理屈ではなかった。しかしそうであるが故に、俺は言葉を失っている。

 後先を考えない行為とは、明らかに一線を画していた。真の示した覚悟が、文字通り俺を呑み込もうとしてゆく。


 くちゅ……。


 淫靡な音を立て、先端を包もうとする坩堝は――もう、すぐにでも。しかし、真はそれ以上の力を込めることなく、恐らくは俺を待った。


「この時に運命を感じてくれないのなら、私……泣いてしまうから」

「ま、真……?」

「ねぇ、オジサン……」


 意思を伝えたその瞳が、ゆらりと潤んで揺れていたことを――俺は、認め。

 はっとして――ふと思った。しかし、なにを思ったのかを、正しく認識できたはずはなくて。

 だが、そうした直後――。


「真――」

「うん」


 ――ぐっ!


「あっ……!」


 俺は、腰を沈めた。

 己の感情も覚悟も衝動も昂揚も――ありとあらゆる全てを――真の最中に押し込んでいったのだと、そう感じていた。

 迎えられるように、柔らかだと感じる。

 ぬらぬらと濡れゆくままに押し進むと、ゆっくりと行き着く深度までに達した。


 ――――!


 と、瞬間――女たる内壁が、呑み込み果たした男のその形を、確かめるように。

 キュウッ――と、それに絡みついた。

ストーリーメニュー

TOPTOPへ