ほんとのうた(仮題)
第8章 身体を求め、精神(こころ)を探して
ドサッと真の背をベッドに寝かせ、俺はその上から再度――身体を重ねた。
真は――真なのだと、思う。
情交に構えることも臆すことなく、それどころか愉しみ――全身に女である怪しさを纏い、笑う。
普段の屈託のない笑顔からすれば、それはやはり意外にも映り。しかし、それを別の顔とするのは、他者の勝手な思い込みに過ぎないのだろう。
何故なら、真は――揺ぎ無く淀みなく、貪欲であり真っ直ぐで――それらが何処までも、真だった。
既に身体を重ねながら、俺は確かにそう思う。そう思えたからこそ、更に倍するように昂揚してゆく。
「あ……あっ……ん」
緩やかに差し込むながら、確かめるようにキス。その感度を隠さない尖った乳首を、含んで唇に挟み咥え取った。
「うん……いい」
潤んだ瞳が、一心に俺を見つめる。
セックスとは、ある意味で解放。それまでの俺の人生では、その様な側面があったことは否めない。
しがない世間から、束の間に解放され。小難しく理屈を捏ねることから、解放される。恰好つけようのない裸の姿が、そうさせてくれた。
だが今の俺は、やや違うのだろう。快感に溺れないよう思考に負荷をかける、という取り留めもない事情はあるにせよ。だが、そうではなく。俺はこの後に及んで、真のために――などと、考えてしまっていた。
だから――自問。
こんなにも真っ直ぐであるのに、この真が「ほんとのうた」ってやつを、唄えないのは――何故か?