ほんとのうた(仮題)
第9章 対峙して
「……」
その見知らぬ番号からの着信は、その時が二度目だった。
数日前、同じ番号からかかってきた時は、知らない番号ということで割と平然とスルーできたのだが……。
「誰から?」
と、真から訊かれ。
「さあ……知らない番号だ」
とりあえず、そう答える。
「じゃあ、ほっとけばいいよ。どうせ勧誘とか、そんなのでしょ」
「あ、ああ……そうだな」
そう言いながら、俺の中では嫌な予感が膨らもうとしていた。
俺が『天野ふらの』を連れているという事実に、太田のヤツが気づいてから(おそらく)五日目となる。そして俺は既に、アイツに会社には戻らないと明言してあるのだ。
「――!」
そんなことを思慮する内に、二度目の着信も途絶えている。
しかし、このまま看過することを、許してくれそうもなかった。それは誰かも知らない電話の相手が、という以上に。
このままでは駄目だ、という気持ちを生じさせた俺自身が――。