ほんとのうた(仮題)
第9章 対峙して
※ ※
東京と直通の新幹線で結ばれる、その駅舎に到着する。立体駐車場に車を停め、俺と真は駅前のロータリーに降り立った。
「真――」
俺は大きなキャップを、その頭に目深に被せながら言った。
「目立たないように、くれぐれも気をつけるんだぞ。ほら、馴染みはないかもしれんが、これはテレカだ。渡しておくから、なにか困ったことがあれば、すぐ俺の携帯に電話してこい」
「うん……わかった」
幾分、心細そうにしている真を、徒歩五分ほど離れた場所にあるショッピングモールの一角にあるシネコンの前まで連れて行く。特に映画が観たいわけでもなかろうが、人目を避けるという意味ではそうしてもらうのが有難い。
そんなわけで、久しぶりに俺は真と別行動となった――そして。
「さて、と――」
既に受けているメールから再度、相手の到着時刻を確認する。
真の所属事務所の代表。その人物と対峙し、果たしてなにを語ろうというのか。それは俺自身も、わかってはいなかった。