ほんとのうた(仮題)
第9章 対峙して
俺の祖母の墓参りの時に、真から聞いていた話を踏まえるのなら、それは遠からずのはず――そう思ったのだが。
「……」
上野さんの俯いた顔。その唇が、きゅっと結ばれる。
もっと直情的に怒る、と思っていたから少し意外だ。どこの馬の骨とも知らぬ、俺の様な男にここまで言われれば、それも当然に思うが……。
彼女はそのまま暫く、葛藤するようにして押し黙っていた。
そうなると、些か挑発が過ぎたかと後悔。我ながら、輩(やから)感がハンパない。ちょっとキャラ作りを誤ったかな……。
それでも、俺には俺なりの考えがある。真の周囲の事情を僅かでも知るために、ここで彼女との面会に臨んでいたのだ。
はっきり言って(上野さんから見れば)赤の他人であろう俺が、彼女を相手に本音を引き出そうとした時に、やはり怒らせてみるのが手っ取り早いと思った次第である。
さて、その結果は如何に――。
「随分と……色んな話を、聞かされたようですね」
「まあ、成り行き上――少しはね」
「では――私と、ふらの――いえ、真との関係についても?」
「一応、聞いていますよ」
顔を上げ会話を再開した彼女は、その時――ふっと意味ありげに笑った。
「貴方はもう、すっかり真の味方のようです。ですから私が話すことなんて、全て言い訳じみて聴こえてしまうのでしょうね。実際、貴方の言う『野心』も私の中に無かったとは言えませんから……」
上野さんは、テーブルに視線を落しながら、沈んだ様に話した。
その姿を前に――。