ほんとのうた(仮題)
第9章 対峙して
まあ、それはそれ――と、開き直る術もないが。
それでも、真と関係をもったことで、気が付けたこともあった――はず。
俺は罪悪感に見える心をグッと持ち直し、上野さんを前に再び姿勢を正した。この先こそが、俺サイドからの本題。それは彼女と話をしたことで、むしろその必然性は強固なものと変わった。
「誰とも知らぬ俺のような男に、そこまでお話しいただけたこと、率直に感謝しております。その上に無理を重ねることを承知で、一つお願いしたい」
俺は財布を手にすると、その中より“あるもの”を取り出し、彼女の前に差し出す。
そして――
「後、三日だけ――俺に時間をくれませんか」
「三日……それと、コレは?」
上野さんは、言葉と差し出されたもの、その両方に疑問を示した。
俺はとりあえず、後者の疑問から答えててゆく。
「コレは、俺の免許証です。旅先ですから、お渡しすることはできませんが。どうぞコピーを控えてください」
「どうして、そのような真似を?」
「俺なりの覚悟の証ですよ。もしも三日経過して真が戻らなければ、その時は警察に通報してもらっても構いません。免許証の情報があれば、その対応も迅速になることでしょう」
「……」
上野さんは黙って、テーブル上に置かれている『俺の覚悟の形』を見つめた。