ほんとのうた(仮題)
第9章 対峙して
「バ、バカ……。いきなり大声で話し出すな」
『だってぇー、映画クソつまんないんだし!』
「だったら、終わるまで寝てろ」
『眠くないし――てゆーか、もう出て来ちゃったから』
「お前な……」
『そんなわけで。あと10分以内に、迎えに来ること』
「ま、待てよ。こっちは、まだ――」
『もし遅れたら、この場で持ち歌を全力で歌ってるから、そのつもりで』
「オ、オイ――!」
――プッ! と、勝手な言い分だけを残し、通話は切られてしまった。
「全く、あのバカ……」
唖然として、そう呟いた時だ。
「元気そうですね――真」
向かいの席で、上野さんが微笑む。
結局は彼女の見守る前、通話してしまい。その声量から、相手が真であることもバレたようだ。
ヤバい……。仮にもその義母の聞いてる前で、バカとか言っちまった……。
「えっと、それで――さっきの話の続き、なんですが」
先程までのマジな雰囲気は、当然すっかり台無しである。俺は半笑いで誤魔化しつつ、とりあえず話を戻そうとした。
すると、とても意外なことに。
「承知いたしました」
「は……?」