ほんとのうた(仮題)
第10章 想い、知らされて
そして、俺とは異なる角度から、真もこの物語を捉えているのだ。輝く場所は、彼女の魂を惹きつけて止むことはなかろう。ならば本能的である故により強固に、真もそれを察しているはず。
迷いを脱すれば、きっと。真は自らの足で、揺ぎ無く其処を目指す。
だとすれば、俺のこの想いは杞憂だ。真の邪魔になることはあっても、助けにはなるまい。
だったら、俺も、いっそ……。
「……」
その背中を、せめて力強く――突き放して、やるだけ。
やがて俺も横になり、微睡を覚え始めた時だった。
「オジサン――もう、寝た?」
と、僅かな音量でも、その声はよく通って聴こえる。
「ああ……どうしたんだ?」
「ね――少しだけ、お話しをしない」
「話って、どんな?」
「なんでもいいの。オジサンの話したい、こと」
「自分から振っておいて……人まかせかよ」
「私が勝手なのは、今更でしょ」
「まあ、そうだな……」
俺は欠伸を噛み殺したついでに、苦笑を浮かべた。
「じゃあ、そんな真に、ちょっとした質問を――」
「なに?」
「お前から見た俺って――どんな存在?」
「急に意味深な質問がきたし。なんなの、それ?」
「寝惚けついでだ。文句を言うな。たとえば――誰かに似てるとか、そんな感じもいいよ」
「オジサンに、似てる人……か?」
真はそう言って、暫し考えを巡らす。
その時、俺の頭の中では、予め一つの答えを予期していた。「お父さん」との返答は、昼間の上野さんとの会話から。
もし真がそう言ってくれるのなら、俺の中に燻る妙な感情を押し込めることができそうな気がしていた。
だが、真の解答は実に意外なものになる。