ほんとのうた(仮題)
第10章 想い、知らされて
「……」
大自然の雄大さに比して、俺は己の矮小さを痛感しているのだった。
一方で元気な真は、わざわざ俺の休憩地点まで戻ると右手を差し出して言う。
「ほら、平気?」
「ああ、面目ない……。真は体力の方も、かなりのものだな」
「二時間のライブをやるのに、どれくらいのスタミナが必要かご存知かしら? このくらい楽勝だよ」
「ハハ、まいったよ」
真の手を取り立ち上がると、俺たちは再び歩き出したのだが――。
「真……?」
「仕方ないからさぁ。私がこうして、手を引いてあげる」
真は手をぎゅっと握りしめたまま、俺のペースに合わせるようにゆっくりとした足取りで進んでくれた。
すると、すれ違った六十代くらいの女性に「まあ、仲がいいのね」を微笑みを向けられてしまう。
「なあ、恥ずかしいって……」
俺は頬がかぁとなるのを感じて、思わず真に耳打ちした。大人の男としてのメンツは既に丸つぶれなのはいいとしても、流石に恥ずかしすぎるだろ……。
しかし、真は――
「照れない、照れない。せっかくだから、楽しもうよ」
事も無げにそう言うと、繋いだ手を大きく振り始めている。
そこより先の道中、俺は繋がれた手から力を分け与えられるようにして、足取りも心なしか軽い気がしているのだった。