テキストサイズ

ほんとのうた(仮題)

第11章 頼むから


 普通に明後日が三日目と考えても、それは許容内であるような気はしている。上野さんも恐らくは、そのつもりでいるはず。

 だが、ここに至っては、できるだけ早い方がいいような気がした。もう二人が、足並みをそろえて歩くのも終わりにしなければならない。

 俺は明日中には、真を東京に帰そうと決めていた。


 部屋での夕食を終え、久しぶりにテレビでプロ野球観戦をしていた時である。俺の付き合って隣でなんとなく試合を観ていた真が、ふと俺に訊ねてきた。

「あのさぁ、オジサン――明日は、どうするの?」

「ん? ああ、それは真次第だ」

「じゃあ。また、私の行きたいところに連れて――」

「そうじゃない!」

 俺は言葉を上に重ね、真の希望を即座に否定した。

「オ、オジサン……?」

「今、試合がいい場面なんだ。少しだけ、静かにしていてくれ」

 俺はそう言うと、プロ野球中継のテレビ画面に釘付けとなった。そして――

 ――カキーン!

 そんな快音を残し――

「――ヨシ! 逆転スリーラン!」

 スタンドに吸い込まれた白球に、俺は期せずしてそんな声を上げた。

 俺の贔屓にしてるチームは、はっきり言うと、どうにもならないくらい弱い。しかしこの日は首位を走る強豪チームを相手に、終盤でリードする絶好の展開となっていた。

ストーリーメニュー

TOPTOPへ